大阪簡易裁判所 昭和58年(ハ)4303号 判決
(抄録)
「1 <中略>
2 請求原因2の立替払契約締結の事実について判断する。
(一) 証人Mの証言、Y本人尋問の結果(第一回)及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第九号証(たゞし、『永久脱毛』『七〇H』とそれ以下の書込部分をのぞく。なおYの署名及び名下の印影がYの印章により顕出されたことは当事者間に争いがない)、成立に争いのない甲第五号証、証人Hの証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。即ち、Yは、全身美容のことを新聞のちらしによって知り、昭和五七年九月二一日午後友人と二人で販売店の祇園店を訪ね、責任者のMに会ったこと。Yは、Mから、永久脱毛の施術に関するコースの説明のほか施術の方法につき、皮膚に電気針を差込みピンセットで毛を抜く程度の簡単な説明を受け、施術中もその後も無痛である旨聞かされたこと。代金の支払についても、YはMからローンの説明を受けたが、Xと日本信販のいずれのローンを組むか等具体的な話は出なかったこと。Yは、施術に伴う痛みを心配し、『一寸通わせていたゞいて様子をみて、痛みがなければ七〇時間程度のコースにする』とMに告げ、Mも諒承したが、Mから『ワールドに来てもらうなら住所・氏名を書くように。入学手続のようなものだから』と言われ、Yは販売店で施術を受けるためには必要な手続であると思い、二五〇〇円を払い、申込証(甲第九号証)とショッピングローン契約書(甲第一号証)に似た形式の書類二通に署名し、生年月日、住所、勤務先、その所在地、勤務内容、電話等を記載したこと。甲第九号証の『永久脱毛』『七〇H』、総計金額と内金額は、後にMが記載したこと。Yは、同日帰宅後口座番号を販売店に電話で知らせたこと。Yは翌二二日午後二時二五分Xから立替払契約の申込意思の確認を勤務先において電話で受けたこと。電話の対話の中でYは一括払の意思さえ表明していること。Yは、予約日である翌二三日に販売店の祇園店に出向き、毛先のカットをしてもらったが、印章を持参しなかったことをきつくとがめられたこと。Yは、次の予約日である九月二五日に祇園店に出向き、一時間にわたり従業員よりすね(脛)に施術を受けたが、印章(三文判)をMに交付し、帰るとき返還を受けたこと。どのような書類に押印されたか確認しなかったこと。この日うつ伏せになって施術しているとき、Mから署名と住所の記載をもとめられ、甲第六号証念書に、痛みと読むひまもなく署名をしたこと。甲第六号証の作成日付はYの記載ではないこと。契約書(甲第一号証)のY名下の印影はYの印章による(この点争いがない)が、これは九月二五日印章をMに交付した際押印されたものであること。申込人欄の記載はYの筆蹟ではないこと。甲第一号証に記載されている『手数料』、『分割払金額』の記載は、電話確認の際の話合いで初めて出た金額であること。以上の事実が認められる。前記証拠中右認定に反する部分は採用しない。
(二) 右認定の事実によると、甲第一号証は、販売店によりYの印章が押印されているけれども、Yが九月二一日に署名した文書に押印された訳ではないことになるから、文書成立の観点からみるとき、特段の事情のない限り、押印による成立の真正を推定することはできない。また甲第一号証は、販売店がXに対し、Yに代って立替払契約の申込を電話でした九月二二日の段階では、金額の記載・署名はおろか押印も行われていなかったと言わなければならない。
(三) Yは、九月二一日に甲第一号証に似た形式の書類二通に署名等をしているが、前記認定の事実にてらすと、販売店がYに代ってXに対し電話により立替払契約の申込をした九月二二日の段階においては、Yが施術のコース(料金を含む)を決定していたこと、その代金の支払のため立替払契約の申込を販売店に委託していたことはなかったと言わなければならない。
(四) Xは、YはXの電話による立替払契約締結の意思確認に応じたと主張するところ、Y本人尋問の結果によると、YはMとそれまで立替払契約について具体的な話合いはしておらず、書類に押印もしていないので、立替払契約の申込をしたという意識はなかったところ、近い将来立替払制度を利用するときの相談の電話と思い応待したと述べており、前記認定の事実にてらすと首肯できない訳ではない。電話確認をもってYの立替払契約の申込意思を推認することはできない。
(五) 立替払契約の申込は、販売店が購入者に代って信販会社に申込み、信販会社が所定の手続をもって承認し、販売店に通知したときをもって成立するものとされているところ(甲第一号証契約書第一条、標準約款第一条)、本件においては、Yが販売店に立替払契約の申込の委任をしていないのにかゝわらず、販売店からY名義により右申込がなされ、Xの承認の上、販売店にその通知がなされたのであるから、立替払契約は成立していないというべきである(契約が成立するとしても、Yに効力が生じない)。」